5月 バンビだより
長い連休を超えました。お仕事だったみなさんは、お疲れ様です。4月からの環境に慣れてきていた子どもたちもまた1からのスタートになりますね。1からですが、0からではないので、あせらずゆったりと子どものペースで、またバンビの暮らしに戻りたいと思います。
休み前には懇談会と父母会の係決めにたくさんの方に参加していただき、ありがとうございました。みなさんから出た悩みや困りごとを、共有できてよかったと思っています。あのとき担任からも話がありましたが、「子どもが自分で悩んで葛藤して、そこから立ち直ることが大切」だと日々感じています。子どもにはいつも笑っていてほしいと思うのは、親として当然の気持ちですが、いつも満足している状態では子どもは育つ機会を逃してしまいます。泣いて泣いてそれでも思いが通じないことや、理不尽にも思えるようなことが、子ども同士の遊びの中にはたくさんあって、それを乗り越えることでこころが大きく成長します。
このあいだも、絵本の貸し借りで、こんな場面がありました。
AちゃんはBちゃんが持っている絵本がほしくてたまりません。でも、Bちゃんも今読もうと手にしたばかりなので、貸してくれそうにないことはAちゃんもわかっています。でも、やっぱりほしいのです。
「かーしーて」
勇気を振り絞りちっちゃな声で言ってみるけど、Bちゃんはちらっと見るだけ。だめだった…とばかりに泣き出すAちゃん。
そのときにおとなができることは、Bちゃんから絵本を取り上げてAちゃんに渡し、Aちゃんの気持ちを満足させることではありませんよね。ではどうしよう?
わたしがいつもこころがけているのが「受け止めて、切り返す」です。
このケースなら「そうか~、Aちゃんもあの本がほしかったよね~」と、Aちゃんの気持ちを受け止めます。それもこころの底から。そうすると絵本そのものが手に入らなくても、気持ちをわかってくれる人がいた、というだけでちょっと満足がいくのですね(必ず満足できるとはかぎりませんが)。それから「でも今はBちゃんがよみたいみたいだね。『あとでかして』ってきいてみる?」など、切り返して相手の気持ちを伝えるのです。Aちゃんにとっては受け入れがたい条件かもしれません。でも、まず自分の気持ちを受け止めてくれたおとながいうことだからこそ、じゃあ、そうしてみようかなと考えることができるのだと思います。
このときはAちゃんと話をしたBちゃんが、時間はだいぶ経ってからでしたが、約束を忘れずにいて貸してくれました。おとなにいわれなくても、ちゃんと「約束は約束」と覚えているのがBちゃんなのです。わたしも嬉しくて「Aちゃん、よかったね。Bちゃん、ありがとうね」と声をかけました。
こんな風にうまくいって貸してもらえることばかりではありません。それでも待っているうちに別の遊びが楽しくなっていつの間にか絵本のことをわすれていたり、ほかの子に声を掛けられてほかの絵本に夢中になっていたり、そんなこともあっていいんです。子ども自身が自分で乗り越えたからです。
2歳児でのこの「受け止めて切り返す」やりとりは、5歳児での成長に大きく関わるといわれています。子どもの気持ちに寄り添うといって、おとながなんでも言われたとおりにすると、それは子ども自身が本当に望んでいる結果ではないということもあると思っています。
だから子どもの成長について昔からいろんな言われ方で伝えられてきました。
・「おばあちゃんっ子は3文安い」(おばあちゃんに甘やかされて育つとよくない)
・子どもを不幸にする一番確実な方法をフランスの思想家ルソーが説いている。
<それはいつでもなんでも手に入れられるようにしてやることだ>(『エミール』)
・「うまくいかないこと」が子どもの意欲を育てる
・三分の飢と寒を存すべし(『養生訓』貝原益軒)(少しの飢えと寒さを経験することが子ども時代には大事)
保育士でも難しいと感じる「甘えさせる、甘やかす」の線引きですが、コツは…
泣かないように、と考えるのではなく、いくらでも泣いていいんだよ、とおおらかに受け止めること。
いつもできないことばかりでがまんさせるのでなく、1年に2、3回くらいは特別な日があっていいと考えること。
なにより「子どもには乗り越える力があることを信じる」おとなでいることだと
思います。
これからとってもいい季節!のびのび泣いて、笑おう!
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